読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

とびだせどうぶつの森 QRコード置き場

ここにはおもに『とびだせどうぶつの森』でネオジオキャラになりきるためのマイデザイン用QRコードや、SNK関連の二次創作テキストなどを置いています。髪型や髪色、瞳の色については『とびだせどうぶつの森』の攻略Wikiを参照してください。

『帝王の城』


 イーストアイランド、午前2時。
 弱々しく明滅を繰り返す街灯の下、リムジンのヘッドライトに照らし出された男は、掌打1発で崩れ落ちた不甲斐ないゴロツキを一瞥し、鼻を鳴らした。
「ふん……雑魚と呼ぶのもおこがましい鼠輩どもよ」
 自分の力に対する絶対的な自信と、敗者に対する侮蔑の色濃いセリフである。リムジンの脇に、朱塗りの棒をかついで立っていたビリー・カーンは、込み上げてくる笑いをこらえて口を開いた。

 「わざわざギースさまのお手をわずらわせるほどの連中じゃありませんよ。次からは俺に任せてください」
「そういうな、ビリー」
 苦笑して振り返ったその男の顔は――この街の人間であれば我が目を疑ったであろう――数年前に転落死したとされていた、ギース・ハワードのものにほかならなかった。
「――その目で見て、痛みを味わってみなければ、私が帰ってきたことを信じられぬ馬鹿者が多いのだ、この街にはな」
 傲岸不遜なその声もまた、間違いなくギースのものだった。以前の彼と少し違うところがあるとすれば、少しやつれ、髪が長く伸びているということくらいだろうか。
 黒服の男が差し出したコートをはおると、ギースは顎をしゃくった。
「ついてこい、ビリー」
「どちらへ? クルマをお出ししますが?」
「たまには歩くのもよかろう。――なに、すぐそこまでだ」
「はい」
 ビリーはただひとりギースにしたがい、水溜まりの残るアスファルトの上を歩き始めた。周囲にほかの人影はない。
「もう、10年以上も前のことだ……」
 スモッグにさえぎられ、星のきらめきもあえかな夜空を見上げたギースは、ビリーに語るふうでもなく、小さな声で呟いた。
「私は自分の城を築いた。世界のすべてを手に入れるべく、我が覇業の拠点となるはずの城を、ここに築いた……」
 長い鉄橋を渡ったところで立ち止まったギースとビリーの目の前には、黒く巨大な影があった。
 その主人を失い、今は明かりをともす者さえいない、鉄とコンクリートで築かれた文字通りの城――人々はそれをギースタワーと呼んでいた。
「まさかその覇業なかばにして、あのような青二才どもにつまずかされるとは思っても見なかったがな……」
 自嘲めいた言葉に、ビリーがギースの顔を覗き込む。しかし、ギースはどこか楽しそうに笑っていた。
「……すべては過去のことだ。あやまちは二度と繰り返さぬ」
「ではギースさま、いよいよ……?」
「そうだ、ビリー。私が再起を図るにふさわしい場所が、この街以外のどこにある?」
 ギースはたかだかと右手をかかげ、ぱちりと指先を鳴らした。湿った夜気を震わせて響き渡ったその音が消え入り、それと同時に、この1年、沈黙を守り続けていた城がゆっくりを目を醒ました。
「おお……」
 思わずビリーが溜息をついたほど、その光景は壮観だった。いっせいにすべての窓に明かりがともったギースタワーは、おそらく、このサウスタウンのどこからでも眺めることができただろう。煌々と輝くギースタワーは、その主人の帰還をことほぎ、街の人々に知らしめているかのようだった。
「私は帰ってきたぞ、この街に」
 そうひとりごちる声は、心底嬉しそうだった。降りそそぐ光のまばゆさに目を細め、ギースは拳を握り締めた。
「誰が真の支配者か、すべての人間に判らせてやる……」
 ぬるい夜風が吹き寄せてきて、ギースの長い髪を揺らす。足元の水溜まりに映る自分の顔を見下ろしたギースは、中ほどで束ねられた髪を手に取って笑った。
「――だが、その前に」
「その前に……何です? 例の日本人なら、俺が――」
「いや、まずはいつもの床屋だ。この髪が鬱陶しくてかなわん。ついつい伸ばしたままにしていたが――今となっては、あの若僧どもを思い出して腹立たしくなるだけだ」
「ああ、あいつらですか……」
 一度ならず戦ったことのある若者たちの顔を思い浮かべ、ビリーも笑った。
「ギースさまが生きてらしたと知ったら、あいつら、どんな顔しますかね?」
 ギースは肩をすくめ、ギースタワーの正面エントランスに向かった。すでに大勢の黒服たちが、彼の到着を待ちわび、列をなしている。
「――また私の邪魔をするようであれば容赦はせん。何しろあいつらは、私自身の”仇”だからな。いずれこの手で始末してやる」
 ギースはビリーを振り返り、親指を立ててのどを掻き切る仕種を見せた。

      ◆◇◆◇◆

 この日、サウスタウンにギース・ハワードが帰ってきた。
 ふたたび、権力の階段を登るために。
                                ――完――