『鳴神屋騒動秋風花』 前段
旅支度をしている自分の手もとを、妹がそっと肩越しに覗き込んでくるのが気配で判った。
「ねえ、今度はどこに行くの?」
葉月のその問いに、火月は何の気なしに答えかけ、はっとして兄の顔を見やった。
「――――」
囲炉裏をはさんで火月と向かい合わせに座っていた蒼月は、先刻から無言のまま草鞋を綯っている。しかし、まさにその沈黙が、火月に対して余計なことはいうなと釘を刺しているかのようだった。
旅支度をしている自分の手もとを、妹がそっと肩越しに覗き込んでくるのが気配で判った。
「ねえ、今度はどこに行くの?」
葉月のその問いに、火月は何の気なしに答えかけ、はっとして兄の顔を見やった。
「――――」
囲炉裏をはさんで火月と向かい合わせに座っていた蒼月は、先刻から無言のまま草鞋を綯っている。しかし、まさにその沈黙が、火月に対して余計なことはいうなと釘を刺しているかのようだった。