サムライスピリッツ絆 未使用掛け合い01
前提1:『サムスピ絆』は、週に3階、かわら版と称してアイコン+セリフによるキャラ同士の掛け合いが公開されていた。 前提2:月替わりで『初代』→『斬紅郎』→『剣客伝』→『真』……という順でバックストーリーが変わり、かわら版もそれに合わせたものになっていた。 前提3:『初代』、『斬紅郎』のかわら版では、王虎は一貫して自分の配下となるべき人材を捜している。 |
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ぐぬう…! |
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ワシが求める真の漢は一体いつになったら見つかるのか… |
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んどらああっ! それを思うたびにハラワタが煮えくり返るわい! |
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…うぬ? |
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パピー |
ワンワン! |
パクパク |
うきっ! うききっ! |
ママハハ |
ピピーッ! |
ぶどらっ!? 何じゃこの畜生どもは!? |
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清にその人ありといわれたこの王虎をあなどるかッ!? |
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邪魔じゃあ! さっさとあっちに行けい! |
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でなくばおどれらワシが頭から取って食…、…はっ!? |
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…そういえば、以前どこかで聞いたことがあったわい… |
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かつてこの日の本に犬、猿、鳥を連れて |
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悪鬼の軍勢を滅ぼした英雄がいたと… |
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我が覇業を支える人材を捜し求めこれまで旅をしてきたが |
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よもや求めるものが人ではなかったとは… |
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ぐぁーっはっはっは! この王虎としたことがうかつであったわ! |
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じゃが、今こうしておぬしらに出会ったのも天の配剤というもの… |
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どうじゃ、おぬしら? ワシの臣下にならんか? ワシとともに乱世を… |
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…お、まっ、待てい!? か、噛むな! 犬! |
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パピー |
ガウガウ…グルル…! |
ぐおおおお! さ、猿! 引っかくな! どあっ… |
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と、鳥までがワシを! つ、つっつくでない! |
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パクパク |
うきききーっ! うきっ! |
ママハハ |
ピキーッ! ピピピ! |
はっ…反乱じゃあ! 臣下に迎える前から反乱が起こりおったぁ! |
公式SS解説17
ss17「Le Pucelle de Poison――上海にて」
初出:2008/02/07 『MIA』特設サイト
「爪痕」のラスト近くで、アッシュが邂逅した謎の女(=笑龍)に「シェン・ウーさま……」というひと言をいわせたところ、いろいろなところで反響があったようなので(おもにヘンな反響だが)、これは実際に笑龍とシェンの対面をセッティングしなければなるまいという意図のもとに書いた作品。
ゲーム中の掛け合いでは、アッシュは笑龍に対し、堕瓏のことを知らないといっているが、あれはアッシュがとぼけているだけのことで、この時点で、あの3人はすでに顔見知りとなっている(ということにしている)。
もっとも、以前も触れた通り、『MI』シリーズと『KOF』本編とはパラレルな関係にあるため、『MIA』が時間的に『2003』より前なのかあとなのかという議論にはあまり意味はない(少なくとも『13』より前なのは確かだが)。この3人の最初の出会いが語られることがあるとすれば、それは『MI』ではなくアッシュ編においてであるべきだと思う。
『2003』主人公チームの中では、シェンがもっとも生活感のある人間だと思うが、それでも、シェンが上海に戸籍を持っていてきちんと納税している市民だとは思えないので、急速な近代化に取り残された上海の裏路地で、暴力三昧のその日暮らしをしている一匹狼として描写した。
タイトルは、フランス語で「毒の乙女」という意味。もちろんシェンに会いにやってきた笑龍のことである。まるで彼女が主人公のようなタイトルのつけ方だが、あくまでメインはシェンである。
『不可逆性』 作品解説
2016年夏、間もなく『KOF14』が発売されるという時期に書いたもの。ロンの手がかりを求めて世界中を旅していたシャオロンが、リー・パイロンの助力を得ようと元宵節の夜にサウスタウンへとやってきた――というお話。いかに元宵節とはいえ、さすがにあの派手な服でうろうろさせるのは不自然だと思ったので、コート+人民帽という地味な格好をさせている。
一方、チャイナタウンの華人社会の重鎮として登場するリー・パイロンは、『龍虎2』では新薬開発で脚光を浴び、『NBC』では新薬の製法を悪の組織に狙われたりしているので、デュオロンに頼まれた薬もほいほい作れるのであろう。正直、『龍虎』でのパイロンはかなり性格に難のある老人なので、もしかするとシャオロンを見た瞬間、「切り刻みがいのある顔じゃて」くらいいわなければならないのかもしれないが、それだとまったくお話にならないので、ここでは思慮深い老人としている。
ちなみに、タイトルの不可逆性というのは、シャオロンの身体の毒はどんな薬を使っても決して消えはせず、つまりはふつうの人間には戻れないという事実を意味している。ある意味、ネスツの改造人間たちより悲劇的。
『不可逆性』
黒と赤。
近代文明から隔絶された漆黒の夜の闇と、あざやかな炎、あるいは鮮血。
「……!」
異変に気づいて母屋へとやってきたシャオロンは、夜の闇の黒さを背負って真っ赤に燃えさかる炎を目の当たりにし、束の間息を止めた。
赤と黒の世界の中で、無数の骸が静かに焼き尽くされていく。鼻を突くこの異臭が何なのか、想像するだにおぞましい。しかしシャオロンは、歩みを止めることなく炎の中を進んだ。
母屋の一番奥、主人たちの寝室へと足を踏み入れたシャオロンは、女がひとり、床の上に転がっているのを見た。
「奥さま――」
いつもシャオロンをさげすみのまなざしで見ていた険のある美貌が、今は血の気を失い、意味もなく天井を見上げている。わざわざ近寄って確かめるまでもなく、そのみぞおちに開いた赤黒い大穴を見れば、女がすでに絶命しているであろうことは明らかだった。