『サムライスピリッツ天草降臨 ~夏の風花~』
1997年3月発売。
『’96』の直後、すぐにでもSNKのノベライズを書きたくて、同じ年の暮れにリリースされた『サムスピ』新作にも手を出した。ただ、せっかくの『天草』であるにもかかわらず、新キャラの風間兄弟はさほど登場せず、ぼくの趣味が前面に押し出されたシャルロット祭りになっている。近年、某アイドルアニメで盛り上がっている沼津の千本松原が舞台なのも、単にぼくにとって馴染みが深い場所だったからである。
池波正太郎の影響もあるが、これ以降、覇王丸が江戸に来ると、かならず狂四郎と軍鶏鍋を食わせたくなる不治の病にかかってしまった。覇王丸たちの生きている時代というのは、だいたい『鬼平犯科帳』の時代とかぶっているのである。
『カレーから四時間、薄曇り』 作品解説
キングの誕生日である4月8日に合わせて書いたもの。エピソードとしては『12』でのリョウのファイターズプロファイルの後日譚に当たり、舞台も同じくロンドン。『龍虎』シリーズ出身のキングだが、実は『龍虎』ではバウンサー出身の女ファイターという程度のことしか描かれておらず、実はイギリスと特に縁があるわけではない。『’94』でかなり強引な国別チーム分けがなされた時に、女性格闘家チームがイギリス担当(?)ということになり、おそらくそれに合わせて「キングはロンドンでバーを経営している」という設定が追加されたのだろう。
実際のところ、2作品しか登場していない『龍虎』より『KOF』での出演歴のほうがはるかに多いため、キングといえば女バウンサーではなく女バーテン、バーのオーナーといったイメージができ上がってしまっている。
『カレーから四時間、薄曇り』
けさは少し雨が降っていた。その名残か、空には鈍色の雲が未練がましく居座り続け、肌寒さに身震いを覚えるほどだった。
「うう……セーター着てくればよかった」
キングやエリザベスといっしょに買い出しに出てきたサリーは、今にも降り出しそうな空を見上げて唇をとがらせた。時刻はまだ正午を少しすぎたばかりだが、おそらくきょうはもう太陽が顔を出すことはないだろう。
「店に入っちまえばどうってことないよ」
年代物のトランスポルターを降りたキングは、サリーたちをうながして駐車場を歩き出した。